エマ・ストーンが纏う「海の精霊」ドレス:アカデミー賞レッドカーペットに「Poor Things」の余韻

映画「Poor Things」へのオマージュ

第96回アカデミー賞授賞式レッドカーペットで、女優のエマ・ストーンがルイ・ヴィトンのドレスを纏い、ひと際注目を集めました。このドレスは、単にエレガントであるだけでなく、彼女が主演を務める映画「Poor Things」の世界観を巧みに取り入れた、独創的なデザインが特徴です。

ストーンは、本作でアカデミー主演女優賞にノミネートされており、その受賞候補の一人としても注目されています。たとえ受賞を逃したとしても、このドレスは、アカデミー賞史に残るような、印象深い一着となるでしょう。

ルイ・ヴィトンとの信頼関係が生んだ、繊細な海のイメージ

ルイ・ヴィトンのアンバサダーを務めるストーンが選んだのは、ペプラム仕立てのエレガントなドレス。流れるようなデザインは、同作で彼女が演じるベラ・バクスターというキャラクターの奇抜で記憶に残るファッションへの、さりげないオマージュとなっています。「Poor Things」は、衣装デザイン賞の有力候補としても名を挙げられており、ファッション自体が重要な要素を担っている作品です。

ギリシャの鬼才監督ヨルゴス・ランティモス(本作では監督賞にもノミネートされており、作品自体も作品賞候補)が手掛けた「Poor Things」は、シュールリアリスム的なオルタナティブな歴史を舞台にしています。ストーンが演じるベラの衣装は、ラッフルや刺繍、細やかなディテールがふんだんに盛り込まれた、目を引くスタイルが特徴です。

また、ドレスからは海の底のような感覚も漂います。これは、ルイ・ヴィトンのデザイナーであるニコラ・ジェスキエール氏の巧みな技によるものでしょう。ジェスキエール氏は、2024年クルーズコレクションで、水中の世界の美しさに着想を得た作品を発表しています。

ストーンはここ数年、ルイ・ヴィトンをアカデミー賞をはじめとする各種アワードセレモニーの衣装に選ぶなど、長年に渡って同ブランドとの良好な関係を築いてきました。そのため、今回の授賞式でもルイ・ヴィトンのドレスを着用することはある程度予想されていました。しかし、サプライズとなったのは、「Poor Things」へのさりげないオマージュが込められていた点です。

ストーンのスタイリストを務めるペトラ・フラネリー氏は、イギリス版ヴォーグ誌のインタビューで、今回のドレスの狙いは、派手な色や奇抜なシルエットではなく、ベラ・バクスターという今年最も忘れられない映画ヒロインの一人を彷彿させることだったと語っています。「エマらしさを失わずに、キャラクターおよびベラの精神とのつながりを表現したかったのです」と、フラネリー氏は述べています。ミントグリーンの色は、映画におけるベラ・バクスターのキャラクターアークを象徴する、新たなスタートや始まりを示唆しているようです。

レッドカーペットに刻まれた「Poor Things」の余韻

エマ・ストーンがアカデミー賞を受賞するかどうかはさておき、このドレスは間違いなく記憶に残る一着です。レッドカーペットに映画の世界観を巧みに取り入れ、ファッションと映画という二つの芸術の融合を体現した、見事なドレスと言えるでしょう。

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